パキシルが効くまでどうして時間がかかるのか

パキシルとは?

うつ病やパニック障害などの精神症状は、ドーパミンやノルアドレナリンの暴走を抑えて精神を安定させる働きがある伝達物質セロトニンの分泌が極端に少なく、ドーパミンノルアドレナリンのバランスが崩れたり、暴走することで引き起こされると考えられています。

そのため、うつ病やパニック障害を発症して心療内科の門を叩くと、症状の程度によっては、セロトニンの濃度を高める抗うつ剤(SSRIなど)が処方されることがあります。

その中でもよく処方されるのがパキシルというお薬です。

パキシルは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の一つです。

セロトニンの分泌そのものを増やすのではなく、セロトニンの再取り込みを阻害してシナプス間のセロトニン濃度を高めます

どういうことかというと、実はセロトニン神経は、その濃度を安定的に保つため、リサイクルする分を確保すべく再取り込みを行っています。

例えば、セロトニンが10個分泌されると、7個が先の受容体に伝達されて神経伝達物質として働き、残りの3個は元の神経細胞にあるリサイクル用の穴を通して元の場所に戻されるといったイメージです。

これにより、セロトニンの流れを安定させています。

セロトニン神経

これに対して、パキシルは、元の神経細胞にあるリサイクル用の穴に蓋をしてセロトニンが再吸収されるのを抑えることで、シナプス間のセロトニンの濃度を一時的に上昇させ、これにより神経伝達物質として働くセロトニンの量を増やそうとします。

この作用自体はパキシルを服用して数時間後には起こります。

セロトニン神経2

シナプス間にあるセロトニンがそのまま受容体に伝達されれば、実質的にセロトニンが増え、すぐに効果が表れるはずなのですが、ことはそんなに単純ではありません。

パキシルが効くまでどうして時間がかかるのか

SSRIは即効性がありません。

パキシルの場合は、通常「効果が出るまでには最低2週間ほどかかります」と医師から説明を受けて処方され、症状が重い場合は、その間の繋ぎとして抗不安薬などが処方されます。

では、どうしてパキシルは、即効性がなく効果がでるまでに最低2週間かかるのでしょうか。

ここでは、パキシルが効くまで2週間以上かかる理由を解説します。

パキシルを飲むとしばらくは脳がセロトニンの分泌を抑制し精神は不安定になる

実は、脳細胞は、セロトニンの濃度が急に増えたことを察知して、セロトニンを安定させるために、セロトニンの分泌自体を低下(またはストップ)させます。

つまり、パキシルがシナプス間のセロトニンの濃度を高めると、脳は増えた神経伝達物質を止めようとブレーキをかけるのです

薬の効果が発揮されるには、このブレーキが解除されなければなりませんが、このブレーキが解除されるまでには少なくとも2週間かかります。

これにより、パキシルを飲みだして2週間くらいは、脳が不安定になります。不安定になる程度やその期間は個人差があります。

人によっては、不安が大きくなったり、パニック発作が起こったり、錯乱状態になったり、震えが出たりする場合があります。

パキシルの服用直後は吐き気や下痢、胃の働きが悪くなることもある

また、セロトニン受容体は脳にだけ存在する訳ではありません。

消化管などの腹部臓器から脳に情報を伝える迷走神経にもセロトニン受容体が存在するため、服用直後は、迷走神経が活性化して吐き気や腹痛、嘔吐、下痢、めまい、また胃の動きが悪くなったりなどの副作用が起こる場合があります。

但し、これらの副作用も、1週間程度で収まっていきます。

従って、パキシルを飲んで1~2週間の時期は脳も体調も不安定になります。

この時期は、薬を飲んだのに良くなるどころか悪くなると感じて絶望してしまう人もいますので、医師、そういう説明を患者にすべきです。

尚、副作用に我慢できなければ医師に相談して薬を減らすなり変えてもうことになります。

パキシルを飲んで数週間でセロトニンの伝達が安定していく

そして、この2週間~の期間を経て、脳は高いセロトニンレベルに適応(神経活動が回復)していき、安定的にセロトニンの伝達が増えていきます。

そして、脳内のセロトニンが治療有効レベルに到達したのちに、気分の改善効果が徐々に現れてくると考えられています。

ある研究では、多少とも効果を感じ始めた人の割合は、2週間で16%、4週間で37%、2ヵ月未満56%と報告されています。効果が出ない人もいます。

さらに、パキシルは神経可塑性を誘発させながら状態をどんどん良くしていきます。

神経可塑性とは、外界からの刺激によって神経系が構造的または機能的に変化する性質で、新しい経験や体験などによって脳が活性化され、シナプスの通りが良くなることで、伝達物質の放出量が増え、情報をたくさん伝えられる・受け取れるようになります。

2週間後より1ヶ月後、1ヶ月後より2か月後がより効果が実感できるのは脳の中でこのような変化が起こっているためです。

ある研究によると、抗うつ剤を長く飲んでいればいるほど、神経のつながりの増加を示すシナプス信号は増えた、とされています。

尚、パキシルは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるにもかかわらず、軽度ながらもノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を持ち合わせており、1日40mgを超えた場合に、この作用が発揮されやすくなるとの研究があります。尚、ドーパミンの再取り込み阻害作用はありません。

まとめ

このように、パキシルは脳内のセロトニン濃度をすぐに増やしますが、脳はそれを察知してセロトニンの分泌を抑制します。

また、飲み始めは吐き気や嘔吐、下痢、胃の調子を崩すといった副作用も出て、不安定な状態がしばらく続きます。

しかし、最低2週間ほどでセロトニンの分泌は安定し、状態は良くなっていきます。

パキシルが効くまでどうして時間がかかるのは体内でこのような変化がおこっているためです。

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